2009年 世界選手権チェコ大会

世界選手権2009 チェコ
2009/08/10
reported by Ryoya Igarashi

7月30日から8月8日にチェコのノーべメストナホード飛行場でパラモーター世界選手権が行なわれ、
日本からは京都の朝日さんと山形の五十嵐がエントリーした。

練習日の27日から現地入りして準備を始めましたが、予定どうりには行かないのがいつもの事で、
現地にエンジンが届いていない状況から始まった。

今回はイタリアのPER IL VOLO社のディエゴ氏にMINIPLANEを2台持って来てもらう事にしていたのですが、
到着が30日になるとの事で練習日に飛べない状況になってしまった。
まあ彼はとても忙しいので文句も言えないのですが。

私のMINIPLANE ABMはイタリアで6月にあったワールドエアゲームに出場した時の帰りにPER IL VOLO社に行って
作ったスペシャルオーダーだったのだが、
まだ完成しておらず、ディエゴがチェコでいっしょに作ろうと言うことになってしまった。

まあ、あの時は最後まで完成しないで帰国したので、忙しいディエゴに任せた方が甘かったのだが。
そんな訳でチェコチームのユーリのエンジンNIRVANA RODEOを借りて練習日に飛行していました。
チェコのNIRVANA社パベルやユーリは毎年日本に飛びに来ていたので、協力してもらって助かりました。


TASK 1 正確な離着陸PRECISION TAKE-OFF AND LANDING
PF1は54名で競技をしているが18名がターゲットの中央のボールを蹴って満点を得点した。さすがに各国の代表選
手が集まっている感じだ。このタスクにも落とし穴が有って、ターゲットだけなのに1時間以上飛ぶ事になった、
原因は上空待機。トライクやタンデムまで約100機が上空待機して、
自分の順番を待ったのだが、
ターゲット近くの地上に置いてあるナンバーボードが小さすぎて自分のナンバーを見落としたりで、
長時間待機する状況になった。朝日さんは途中で燃料切れで不時着してしまったが、
幸いペナルティーは無かったようで、
燃料を入れてまた飛んでいた。私も危なかったのだがなんとかボールを蹴れた。



TASK 2 航法精度距離競技Pure navigation (distance)
2時間で最長飛行距離になるようにパイロンを選んで飛行する競技。
しかし、飛行した時間が強力なサーマルの時間になったので、飛行する事に気を取られると、
自分が今どこを飛んでいるのか解らなくなってしまう。
日本と違って、360度どこを見ても地平線なので、方位がつかめない。
かろうじて北にチェコで一番高いと言う1500mくらいの山が遠くに見えるのみだ。
とにかく地図と方位磁石を合わせて、地図と地形を見比べていないとすぐに迷子になってしまう。
特にこのあたりの地形は丘が多いので目標となる物が見えにくく、
道路も細くて曲がりくねっている。日本人には見慣れない地形だ。
何とか予定の飛行距離を飛んで最後のパイロン近くでロストポジションしてしまった。
何とか近くの池を見つけて最後のパイロンを通過したつもりが、交差点を一つ手前で帰ってきてしまった。
最長のレグのパイロンを逃したので最悪の得点となる。。。
トップはスペインのホセ114kmを飛んだ。
もう一つストップウォッチのスタートを忘れた、いつもの事なのだがスイッチの押し忘れだ。 時計を見ていたのでだい
たいは予想できた、やはり私にはダブル装備とチェックリストは必修のようだ。

TASK 3 燃費航法精度競技 Economy & navigation
約6リットルのガソリンで、写真で示されたポイントを見つけて来る競技だ。
これまたサーマルのキツイ中を2枚の写真集を渡されて、その写真の場所を探し回る、
当然その場所は色々な角度から取った写真なので一方向からだけ見ていたのでは解らないようになっている。
注意深く周りを観察していると他の選手が旋回したりしているので、だいたいの場所が見つかったりする。
しかし基本的には自分で探し回らないと見つからない。
またそのコースが長くて狭い、だいたい50kmくらいで幅が200mだった。
うっかりしているとコースから外れて行き先を見失ってしまいそうになるしサーマルで潰されたり、
どんどん上がってしまったりであっという間に300mくらいは上下する、とても疲れる競技だった。
上がっ時は素晴らしい景色だが下降気流に入るとフルパワーでも降下していくので気が抜けない。
地面ではダストデビルが何本も立ち上がっている、
ワーすごいなあー怖いなあーと見とれてしまう。そんな時ではない、見ないふりをして先に進む。
とてもビデオ撮影をしている暇が無かった。

私は8ヶ所を確認してきたが、着陸してから申告の時に地図の記入位置違いで7個しか得点できなかった。
1個は誤った申告としてマイナスになる。
誰かはマイナスの申告の方が多くてマイナス得点をしていた。虚偽の申告としてあつかわれるのだ。
しかし、申告用の地図が小さすぎておまけに白黒、正確に記入する事が困難だったのは確かであった、
多くの選手がこの点を抗議していたが、使用された申告用の地図は皆同じ条件なので、
そのまま競技は続けられた。
老眼の私にはきつい地図だった。
さすがにチェコチームは14個から12個をとって5位までに4名が入っている。



TASK 4 燃費周回飛行距離(Endurance / laps)
飛行場内の3角コースで周回飛行してその飛行距離を競う、約2リットルで飛行するが、
着陸は3箇所に着陸デッキが設定されていて、アウトサイドは零点となる。
そのため、最後の一滴までガソリンを使いすぎると着陸デッキに届かなくなる。
幸い私の使っているMINIPLANEとPLASMAのコンビネーションはべストマッチングでダントツの1位を獲得した。
これには私も驚いた。
だんだん風もおさまってきたていたのでトリムライザーを向かい風と追い風で微調整していたのが効果有ったように
思う、高度は60mまでで夕方競技は行なわれた。イギリスでの世界選手権では、このタスクを場外着陸して失敗した
経験が生きたようだ。今回はストップウォッチで各レグの所要時間と燃料消費を測定して、
最後の着陸地を決めたのでリスク回避ができた。


Task 5 ピュアエコノミー(Endurance)
確かに1位になったチェコのフランシスカは良い飛びをしていた、
新しいグライダーでチェコチームは今回参戦しているが、このMOJOと言うグライダーは彼の設計したグライダーだ、
さすがに良い飛びをしていた。
やはりリフレックスを使っているようだ。
フランシスカはイタリアでのエアゲームで一緒に飛んでいたので、彼の実力だと感じた、
ストイックなフライトスタイルは見習うべき物がある。
おそらく数回一緒にセンタリングしていたが、その先の雲を使っての移動がすばらしかった。
私も雲低まで上げていたのだが、飛行禁止空域に流されて行くので、移動した時にサーマルを逃してしまった。
彼も2時間半くらい飛んでいたので、おそらくこのくらいの時間がコンディション的には良いほうなのだと思う。
2位以下は1時間代だった。
私も2時間以上飛んだので上位だと思っていたが、スタートパイロンを通過していないとの判定だった。
わずか数十メーターずれていた。



Task 6 クローバーリーフ (Slalom)
私はあまりこの手のスピードタスクは上手くないので、無難に飛んだ。
イタリアでのワールドエアゲームのためにトレーニングはしているので、心配は無いタスクなのだが、
ちょっとした風のいたずらに気を付けないと失敗する、確実に飛ぶ事が一番である。53秒
1位はポーランドのグレゴ43秒はすごい


TASK 7 non fly


Task 8 スピードトライアングル、アウト&リターン
(Speed triangle and out & return)

約30kmのトライアングルをサーマルのキツイ状況で最大速度で飛行する、
その後で残ったガソリンを使って遠い位置まで行って帰ってくるタスク。
いつものように日中の強風がおさまるのを待って、夕方のコンデションを皆待っている。
しかしタスククローズまで3時間を切ったころから待ちきれない連中はスタートする。
まずはその様子を見ているが、カナダの に付いて私もスタートする。
彼は優秀なパイロットなので、間違いは無いと思っていたが最初のパイロンをミスして探している、
少し後から見ていたので私はパイロンが良く解って助かった。
その後は強風のホローで第2パイロンに到着、アクセル踏みっぱなしには出来ないコンデションだ、
次は向かい風で飛行場まで帰るのだが、特に強風なので低空を進む。
サーマルで潰されながら、アクセル調整はきつい。
彼も潰れにめげずに突き進んで行く、立ち木のローターをかぶりながらよく進んでいる。
恐ろしい奴だ。
私は少し上を追いかけるので、少しずつ離される。
まあ落ちたら意味無いので、少しペースを落とす。

第3パイロンに到着して、燃料は約3リットル残っていると思ったが、実際は4リットルくらい有ったようだ。
20リットルの大きなタンクを付けていたので、残量が正確に把握できていなかったのだ。
これが痛恨のミスであった。
低速飛行にして長距離を狙う、低空でリフトを拾いながら西に進む。
帰りに少し追い風になる方向に距離を伸ばして行く。
時々谷を渡るので強風につかまって進まなくなってしまう、なかなか風が収まらないのが残念だ。
だいたい20kmくらい進んだころには何機かの帰りのグライダーを見た、
あいつも帰って行ったのでそろそろ私もと考え始める。
ガソリンの残量は、1リットルになったので帰る事にした。
しかしこの時はまだ2リットルくらい有ったようだ、大きなタンクの底には1リットル残っていたのだ。
帰りは追い風なのでどんどん進んで小さい1リットルタンクが減って行くのを心配しながら帰るものだと思っていたら、
全然減っていかない。
とうとう飛行場まで帰ってきてしまったのに、まだ1リットル残ったままであった。
もう30分以上飛べたのにと思いながら、高度を上げて明日のタスクの下見に行ってみる事にして、
北に飛んでみる。
500mくらいまで上げながら行ってみるがまだまだ、
ガソリンが残っているこんなガソリンが残ってイライラした事は無かった。
とうとう飛行場に帰る事にして高度を下げると、どんどん選手が帰ってくる、そのビデオを撮りながら着陸する。
やはりマークするべき選手を間違えたようだ、カナダのデビットが51kmで1位だった。
いつもならデビットと飛んでいたはずなのに、なぜか単独で飛んでしまった自分に悔しい。27km







Task 9 自己申告速度ナビゲーション
(Navigation / estimated speed)
予定された飛行コースを自己申告した平均速度で飛行してくる競技
私はスネークコースと読んでいた、フリーハンドで地図にグニャグニャ曲線を書き込んだコースだ、
さすがにスネークだけに、難易度は高い。
どこの世界選手権でも自己申告スピードの競技は、良い得点が取れない。
きっとシークレットポイントで測定されているので、丁度そのポイントで予定速度を維持できていなてのだと思う。
まあ平均的に予定どうりの飛行ができれば良いのだが、だいたいが早すぎるようだ。どうも解らん
結局シークレットゲートを1個不通過だったようだ。
それにしても、カナダのデビッドが良い成績だった、あいつはすごいと思っていたが本物だ。
次の選手権者かもしれない。



Task 10  ファースト&スロー (Fast / slow)
飛行場内に5本のポールをセットしてある。
それをスロースピードとファーストスピードでタッチしていく競技
向かい風が強い時に行なわれたので、突風が入って潰されて落ちた。数十センチからなのででも何とも無かったが。
スローは問題無く完璧だった、ファーストを甘く見てしまった。
ポールの3本目で右翼が半分無くなった、クッソウと思ってリカバリーしたら中央3分の1になってしまった。
見ていたディエゴは、こんな小さいグライダーになっていたと言って1mくらいに手を広げる。笑い話で良かった。
スペインでは翼が無くなって病院行きになったので。
何も壊れなくて良かった。

他の選手も潰れて落ちていたので、やはりあまり欲張ってスピードを出しすぎたか。
いつものミスだ。



TASK 11 non fly



Task 12 三角コースタイム (Round the triangle Slalom)
これは新しく行なわれた競技で飛行場内に設定された三角コースのポールをキックして2回りするスピード競技
まわりの連中に聞いてみたがだれもやった事が無いと言う、どこかの選手権ではやったと言うが、
まあ早めに離陸して近くの畑で練習してくる事にした。
近くの畑と言ってもすごく広いので鹿が走り回っている。
どこでも飛べる場所なので低空で三角になりそうな物を探して回ってみる。

みんなの様子を見ていると意外と三角コースが小さいようだ、これはあまり高速で回ると失敗すると思い、
低速で回る事にした、正解だった。1分1秒
1位はイタリアのサンドロ57秒







Task 13 エイトスラローム  (The eight Slalom)
これも新しく行なわれた競技で飛行場内にセットされた2つのコーンパイロンを回って、
その中間のポールをキックする8の字コースを2周回る競技で、
やった事が無い新しい競技だ。
またまた、となりの畑でトレーニング。
トレーニングも慣れてきて良い感じだった。56秒
1位は優勝したイギリスのミシェルで47秒





今回の反省点は
新しいルールを良く理解していなかった点だ、
スタートラインと離着陸のエリアであるデッキが設定されていたので、
必ずそれを守らないと得点にならないシステムだった。
フライトレコーダーで全て判断するためのようだが、前の世界選手権とはちょっと違っていた、
見事にそれにひっかかってピュアエコノミータスクでは大失敗してしまった。

今回の競技会は風が安定した朝の時間にショートタスクを行い、
強烈なサーマルの有る日中に長距離を飛ばせるタイミングで行なわれた。
そのため、飛ぶ事の方に気を取られてタスクをこなすのに一苦労だった。
慣れるまでに少々時間がかかってしまったために、一番遠いナビゲーションでのパイロン位置を間違えてしまい、
大きなロスとなってしまった。
チェコチームのユーリに聞いた話でも、通常はこんなコンディションで飛ぶ事は無いと言っていたので、
特別だったようだ。
私は、厳しいコンディションに備えてほとんどのフライトはリフレックスウイングを使用しているが、
世界選手権ではやはりその安定性は、上位を独占していた。
また、運営側は基本的にタスクが実行可能かを検討しているだけで、
選手の安全性は優先してはくれないと思っていた方がよさそうだ、
タスクを途中放棄するのは選手個人の判断となる。日本とは違いリスク管理は個人にまかされているので、
全ては自分の判断が重要な事になる。怪我しないで帰りたけば自分で飛び方を決めろというわけだ。

もう一つの私のミスはスローアンドファーストで欲張ってアクセルを踏みすぎて潰れて不時着してしまった事だ、
無難にこなすべきだった。
このタスクも強風で行なわれて、スロースピードではほとんど止まってしまう選手もいた。
逆にファーストスピードでは突風が入って何人も潰されていた。

アウトアンドリターンでのガソリンの残り量を読み違えて1リットルも残して帰ってきてしまった事、こ
れは機材の準備不足で悔やまれる。
今回は特別に20リットルのタンクを取り付けていたので、残量が正確に読みきれなかった。


良かった事は
周回飛行の燃費競技でダントツの一位を得た事
MINIPLANEとPLASMAのコンビネーションが最高の性能を発揮した。
おそらく、燃費レースでは全て一位を取れる予定だったが、
最大得点を取れるピュアエコノミータスクで2時間30分の飛行をしたのに、
スタートラインの未通過で得点を取れなかったが、最高の性能と飛行技術では負けていない事を実感できた。

また、今回の世界選手権では、タスクの発表がパソコンの無線LANで行われた。
もしパソコンが無かったら、壊れたらどうなるのだろうと不安だった。
その心配のとうりに、私のパソコンがインターネットに繋がらなくなり、
朝日さんに別のソフトを入れてもらって回復した。
タスクボードに発表されるのが遅くて、タスク開始までの準備が遅れるので無線LANでのタスク発表のようだが、
色々な問題が多かった。
いずれにしても、すでにここでは情報戦に付いていけなければタスクはこなせないと言う事なので、
パソコンできなければ成り立たない世界となった。
最低でも各種ソフトを使える事と自前のプリンターは必需品だ。
同じテントでハンガリー人のチボールも一人での参加だったので、プリントを毎回あげていたが、
彼も山飛びのパイロットのようで、この情報戦には着いて行くのがやっとのようだった。
世の中どんどん進んで行くのに着いて行くのではトップを取れないので
先回りすべきと感じた。








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