2007年 世界選手権中国大会

世界選手権2007中国大会日記
五十嵐亮弥
2007/8/22 夜は涼しい25℃
中国東方航空でBeijing空港に到着、出迎えを頼んだエージェントと合流、運転手のレンさんとホテルへ移動。中国の
様子が解からなかったので移動はエージェントを頼んだ。

2007/8/23 晴れ37℃
松尾さんのオフィースに行き、椋本さんのコンパスを買いにデパートへ行く。
お昼は安くて美味い店に連れて行ってもらい、メニューでは味の予測は不可能なので通訳のリリーさんに選んでもら
う。美味かった
荷物の確認にBeijing Flyingman baseに行くがエンジンは届いていなかった。夕飯が遅くなって何もレストランに残っ
ていないと言うので水餃子を食べる。これが中国の第一印象になる。

2007/8/24晴れ35℃
車を予約していたが、朝から腹痛で病院へ行く事になる。まさかの展開、点滴して九州病院で一日寝る事になる。椋
本さんは元気いっぱいで、病院で肉まんを食べていた。
荷物のピックアップを業者にしてもらうが、やはり2個しか届いていない。EMSなのに配達は無し。

2007/8/25 曇り35℃
ホテルで、休む。
暇になったので、椋本さんとJPMA競技プロジェクトの日本選手権タスクカタログと競技規定を作る。

2007/8/26 雨25℃
ホテルで、休む。
高橋選手が北京到着、あいかわらずのハイテンションに私は体重が減ってしまった。

2007/8/27 晴れ30℃
やっと椋本さんと五十嵐の2箱の在りかが解かる、Beijing Flyingman baseの倉庫に隠れていた。
朝日選手、萩原選手、高畑選手 北京着
残りの荷物を業者にピックアップしてもらって、やっと予定の荷物を受け取った。
これまで6日かかった、中国式の仕事を見せ付けられた気がした。
だんだん、各国の選手が到着。
ラモンだけエンジンを持ってきたので、フライトしようとしたら役員に禁止された。
中国人はいっぱい飛んでいたのに、ラモンだけ禁止されるのは理解できなかった。なぜフライト禁止なのか説明もさ
れないので、ラモンは警察につかまっても良いよと言って飛んでいた。その間役員はずっとラモンの降りて来るのを
待っていたが、降りて来たら何も言わずに去って行った、やはり意味不明な国なのか。


2007/8/28 晴れのち曇り30℃
トレーニング、機体検査登録、
朝日さんだけエンジンが空港で止められているので、やっと中国の役員も動きだして受け取りに行った。すっかり中
国人になりきっている朝日さんは、関西風中国語でまくし立てるとほとんど通じてしまう、さすが関西パワー。

萩原、高畑組のタンデムは推力不足で低空飛行で不調。
高橋君はモジモジ君スタイルでシーメールと間違われて目立ちすぎ。
椋本さんは、20リットルタンク付けて心配そう。KFCで中国のおばちゃんに割り込まれてチャイナパワーに負けたと驚
いている。
五十嵐は体調回復しはじめる、早く来たかいが有ったのか?
今日はラモンを観察してみた、真似してクローバーとジャパニーズラロームを練習した。ある程度納得できる内容が
出来た。

2007/8/29 晴れ35℃
皆フライト出来たが、萩原さんエンジン不調。
中国支給のタンクの内部塗料がはがれて、ガソリンに溶け出して各国のエンジンが壊れ始める、緊急にポリタンクで
ガソリンを買い何とか助かった。
ガソリンの質も悪いようで、特にオイルは持参した物しか使用できないようだった。
さらにガソリンは支給されると発表していたが、それは間違いだったと言い始める、不手際が目立ちはじめる。
夜町のスーパーに買い物に行ったら、フライトエリアで売っている水が1/10で売っていた。
エリアの店は政府がやっているので、外国人には高く売って、中国人には安いのだそうだ。
やっぱり。

2007/8/30
皆とターゲットの練習をした、強風なので難しそうだった。
ジャパンチームはフル装備で準備し、サーマルポイントを確認する事とした。



2007/8/31
競技ブリーフィング初日
各国チームリーダーがそろい始まったなあという感じ。
特にスペインはチャンピオン奪還に力が入っているのが解る。
チャンプのフランスも準備万端。
今年は参加国が多いので始めてのチームも目立つ。
ブラジルまで集まったので地球の裏側からの参加だ。

各国チームのデモフライトが始まる、椋本さんが日の丸を付けて飛ぶ。


2007/9/1
オープニングセレモニーが始まり、中国のデモフライトが始まる。
ハングトライクの編隊飛行からスカイダイビングして来る女性チーム、スポンサーITVグライダーの編隊飛行、中国チャ
ンプのワン選手のデモフライト、地上では拳法とダンスのパフォーマンス、さすが派手派手に始まるのは中国らしい。

今回は23ヶ国から約124名が参加した。例年よりも多くの参加が有ったのでとても国際色豊かで楽しい雰囲気となっ
た。


2007/9/2
TASK1 ピュアナビゲーション
PF1は90分間で最多のパイロンをゲットする、いかしパイロン数ではなく飛行距離が最長になるように飛行するのが
高得点となる。
反省点はGoogelを見て飛ばなかったことだ、上位各国はGoogleをプリントして地図と同じようにして使っていた、
JAPANはGoogleをプリントして持っては行ったが、つないでいなかったために、地図としてコース確認をおこたってい
た。必要性は感じて準備していたつもりが、実際の運用で失敗いしたことになる、やはりヨーロッパ選手権などでの
情報が不足していたための失敗と感じた。
中国はサーマルも強かった、スペインほどではないが、飛行する時間帯が朝早く予定していたタスクが日中になって
しまい、サーマルの中をハイスピードで移動する状況になる。

結果的にはオーバーサイズのプラズマを使っていた私は、サーマルコンディションの程度が良くわからずハイスピード
フライトを抑えてしまっていたようで、70kmくらいしか飛べなかった。
そしてパイロンが発見できずに探し回ってタイムロスが大きかった。前を飛んでいたマチューは早かった、パイロンを
探さずにどんどん通過していった、とても付いて行けなかったのが残念だった。
一位はイギリスのミシェルがリアクションで80kmくらい飛んだ。

2007/9/3
TASK2 & TASK3 ピュアエコノミー&プレシィションテイクオフ&ランディング
2kgの燃料でのディレーションフライトなのだが、近くに山があるので、ソアリングしやすい。
皆山に付くが、サーマルは山の東側から上がっているので、西側にある離陸地点からまず山頂までエンジンを使っ
て上がらなければならない、しかし、時々良いサーマルが有るとそのまま山頂にダイレクトにセンタリングできるの
で、多くのパイロットはそれを狙っていた。
あまりその確立の悪いサーマルを狙いすぎると。いつまでたっても低空でもがく事となる。
椋本さんとチェコのパベルはそれにひっかかったようで、山頂には上がってこなかった。
私は幸いに山頂でのソアリングに成功して、長時間コースに乗った。
しかし、いつものように問題は発生する。
風向きが山の北側に回り始める、20機から30機ソアリングしていた山頂はあっという間に、半分になる。さっきまで皆
楽しげにセンタリングしていたのに。
そうなると山はローターが大きくなり、潰されたり突風が入ってひどい風になる。
なんとか良い斜面を探してラモンはどんどん北に移動してポジションをキープする、それにつられてフランスチームも
移動、しかし長続きはしない風向きはまたまた東に変わる。
風に合わせてソアリングポジションを移動できる者だけが、山頂キープを続ける。
3時間ほどで、さらにサーマルが強くなり上限高度の1000mは軽く突き抜けてしまう。
そうなると、センタリングしていた連中はそのままスパイラルにして、まるでアクロを見ているようなフライトとなる。
そんな気の抜けない状況で、私もミスをする、風向きに合わないポジションをフライトしてしまい下降を始める。
このままでは残りのガソリンを無駄に使ってしまうと思い、前に確認しておいた次のサーマルポイントに移動する。ダ
ムの南側の小さい山に移動する。
すぐにサーマルに当たり高度を上げる、すぐに1000mまで上昇できたので、気が緩んだ。欲を出して町のサーマルで
飛んでみようなどと思ってしまう。どんどん上がるのでアクセルと翼端折で高度をキープして町の近くまで行って、い
きなり下降風に当たる
強いサーマルの隣は強い下げは常識、バカな事をしてしまったと思ったときにはダムを渡れないのではないかと思う
ほどの下げに入る。
何とかダムを渡って行くと中間付近でまたサーマルゲット、センタリングを始める。
ここで弱気になったのが5時間飛ぶ連中と3時間で降りる私との違いなのか。
最後のガソリンで山頂を目指せば5時間コースだったのに、ターゲットに向かってしまう。
ランディング上空でまたサーマルを拾うが300mくらいしか上がらず、とうとうガス欠となってターゲットに向かう、練習
の成果が出てセンターを踏み500点だけはキープした。
5時間47分飛んだのがラモンとマチューの二人だった。
私は3時間19分で11位だった。まだまだ修行が足りんなあ。

2007/9/4
TASK4 ジャパニーズスラローム
練習の成果を出せるとはりきりすぎて、1本ミスする。
ありえないミスだった。
高速飛行しているので、ちょっとの事で浮いてしまって1本タッチできなかった。
いつもラモンは早い、一位で54秒、もう一人同じタイムで一位のポーランドチームがいた。
みんな良い練習をしてきているのが、はっきり解る。
日本ではポールを立てる場所が無いので、どうしても練習不足になってしまう、次はもっと練習しなければ。五十嵐
は69秒だった。


TASK5 ターンポイントハンティング 3kgガソリン
3kgの燃料で最多のターンポイントを通過するタスク。
燃費レースの可能性から、私は山のサーマルに期待して、マチューと一緒にスタートした。
しかし、使えるサーマルはあまり無く強風だけに当たる、早めに出たために皆のウインドダミーになってしまい、帰っ
てきてからほとんどの選手がスタートする事となる。そのころには風はおさまり、かえって移動しやすくなってしまっ
た。
さらに1ヶ所のパイロンは不通過で、6個で終わってしまう。一緒だったマチューは山越えでもエンジンを回さず、裏山
の送電線をなめながな進んだ結果12個ゲットした。おそらく僕らは間違ったナビゲーションだったと言われてしまった
が、マチューはしっかり12個とっていた。
トップはラモンで14個だった。
後から飛んだ連中は風がおさまって楽に移動できたようだ、またまた五十嵐はウインドダミーしてしまった。とても疲
れた一日だった


2007/9/5
TASK6 クローバーリーフ
順調にすべての選手がこなしたと思ったら、ラモンと私が62秒で同じタイムだった。後から聞いた話では、ラモンが役
員の赤旗かなにかの指示ミスで、2回キックしたポールがあるらしい。
スペインチームからクレームが入って、このタスクはキャンセルになった。
ラモン一人だけ、もう一度やらせれば済むタスクをすべてキャンセルさせるのは、異常だと思った。スペインチームは
今回抗議がきつすぎるし、フェアプレーに反すると私は感じた。

TASK7 プレシィションナビゲーション
自己申告速度でのナビゲーションなので、正確にコース上を飛行する必要がある。約65kmのコースで幅200m外れ
るとタイム計測のゾーンから外れる、もしそのポイントを通過しないとタイム計測はされない。このタスクはたまたま椋
本さんと一緒に飛べたので二人は一緒のタイム申告にして飛んだ。そこまでは良かったのだが、地図が1/100000な
ので直線で飛ぶことだけでも難しいコースだ。中国の地図はおおざっぱでとても地図と言える物ではなかった。
まあラモンでも19位だったので、五十嵐の20位はそれなりに頑張ったほうだと思う。つまりこのタスクはギャンブみた
いなもので、とてもナビゲーションとは言えないタスクだと思った。上位選手はおそらくGoogleの写真を見ながら飛ん
だようだ、ルールではオフィシャル配布の地図で飛行するはずだったのだが。


2007/9/6
TASK8 スピードトライアングル、アウトアンドリターン
3kgの燃料での競技で、最初に16kmのトライアングルを一周する、次に10kmのパイロンに向かい、それをクリア後ま
たスタートパイロンに帰り、また10km先のパイロンの往復を繰り返して距離を競う、最後はランディング場に戻る必要
がある。
最初のトライアングルは最大スピードが高得点となる、しかしその後の往復パイロンで距離を最大に飛行するので、
闇雲にスピードを出したらすぐにガソリンが無くなってしまう。
さらに作戦としては、最後の長距離飛行で点数配分が大きくなり得るので、ラモンは必ず燃費にかけてくる。そう思っ
たので私はラモンと一緒にスタートし、ラモンを先に行かせて、すぐ後ろを付いて行く。スターとしてすぐにこれはすご
いと思った、まったくプロペラが低速なのだ、サーマルが強いので、最小限しかプロペラを回さないのだ、それでも低
空70mを進んで行く。
そのうち100mくらいの小山の正面となる。風は向かい風なのでローターに入る。
思いっきり潰されて半分潰れたまま山頂をクリアして行く、オッカナーと思い私は高度を上げて付いて行く。その後も
サーマルの上げでは数回センタリングしてまた進む、エンジンを本当に少ししか使っていない。私はオーバーサイズ
のプラズマなので、ラモンに付いて行く為にアクセルまで踏んでいる、これでは燃費悪いのはあたりまえだ。

やっとトライアングルを終わって、少しは得点が欲しいのでラモンより先にゴールして、例の100mの小山でソアリング
していると、椋本さんがやってきてチラッと見てすぐにトライアングルに向かった。
ラモンは遅れてトライアングルを終了、すぐにまた低いままの高度で直線パイロンに向かって行く。そんな飛び方で一
往復して、ラモンのタンクを覗くとまだまだ余裕だ。私のはそろそろ帰りたくなる量しか残っていない。しかたなくサー
マルを拾いながら帰る。
結果、ラモンはトライアングルの後で2往復してさらに半分近く行っている。
この飛び方は私にとって大きな課題となった飛行だった。


2007/9/7
TASK9 スロー&ファースト
いつものタスクなのだが、今回はコース内のポールキックも要求された。
特にハイスピードでのポールキックは難しいことは皆わかっていた。
結果はラモンがまたキックをミスして、クレームの山となる。
おそらく、この時点から役員の疲れもピークに達して、次のタスクはまったくやる気がなくなっていた様だ。
役員の方には申し訳ないが、クレーム処理の担当を競技とは別にもうけて欲しかった。



TASK10 
スピードナビゲーション
キャンセル

このタスクが発表されるとリーダーブリーフィングは大もめとなる。
スペインとフランスはラモンとマチューが一位二位を争っている、最後にこのタスクをやるとイギリスのミシェルが一位
になる可能性がとても高い。
それは誰が考えても今までの飛び方からして、常識だった。
スペインは特に強く抗議した、この競技はサーマルが強すぎるので中止にするべきだと言うのだ。わたしから見れば
それは片寄った意見だと感じてしまった。今まで毎日強いサーマルの中を飛び続けたのに、今日は飛べないと言う
のだ、おかしな話だと各国からも異論が出た。しかし、オフィシャルはキャンセルと言う方法でこの大会を終わらせて
しまった。
私としてはとても残念な最後だった。
五十嵐は15位で終わったが、課題の多い大会であった。


2007/9/8
グレートウォールフライト
昨日の後味の悪い一日の口直しにオフィシャルからのプレゼントだった。
万里の長城に飛んで行こうと言うのだ、やっと噂のグレートウォールに行けるのか。
みんな張り切ってスタートする、当然指定されたエリアまでしかフライトしてはいけないが、
まあ万里の長城の入り口までは行けそうだ。
100機近くが一気に飛んで行ったので、その指定された空域は蜂の巣のようになっていた。
さすがは噂に違わぬ絶景だったが、それに見とれてスペインのセサールがイタリア人とぶつかってパラシュート着陸
した。しかし無事に帰ってこれたので皆に大喜びされていた。
スペインチームはセサ―ルのパラシュートを見て次々と万里の長城の駐車場に着陸していく、後からビデオを見ると
場外着陸を楽しんでいる者もいたようだ。

午後からはバスでグレートウォールツアーに行く
そのころには皆昨日のことなど忘れて、はしゃぎまわっていた。


2007/9/9
クローズィングセレモニー、表彰
また派手な閉会式とパーティーで大いに盛り上がった。
ラモンの優勝で特にスペインチームは大はしゃぎだった。

2007/9/10
郵便局でEMS発送
エンジンを郵便局から発送する、日本より帰りの方が高いのはなぜなのか?

2007/9/11
朝のホテルへのお迎えが遅くなって、空港へ車を飛ばして間に合った。
やっぱり最後まで中国スタイルに振り回された感じの世界選手権でした。

中国東方航空(CHINA EASTERN AIRLINES) 北京発0825/成田着 1250



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